封筒には2枚のDVDと手紙が入っていた。「夏休みにみんなで行ったキャンプの思い出をDVDにしたので送ります。1枚はデジカメ写真のスライドショーで1枚はビデオのDVDです。DVDプレーヤーやプレステ2に入れると自動的に始まるので、家族みんなで見て下さいね。これ、私がパソコンで作ったんですよ。けっこうやるでしょー?
なんちて。実は、買ってきたディスクをパソコンに入れると画面にガイドが出てきて、ビデオカメラを接続すると簡単な操作でDVDができちゃうんだ。スライドショーはデジカメ写真とメニューを選ぶだけ。けっこう簡単。じゃ、またキャンプに行きましょうね。家族のみんなにもよろしくね」ふーん。早速、僕は家族みんなをリビングに呼んでDVDをセットした。夏の青い空、緑の山、セミの声、そしてみんなの笑顔がテレビに映し出されると、ソファーの子供達がいっせいにはしゃぎだした。そうだった・・すごく楽しかったよなぁ、あのキャンプ。
■ビデオやデジカメ画像はDVDで!
リビングで!
メーカーが考えるリピングでのひと幕はこんな感じでしょう。ビデオ映像やデジカメ写真はみんなで見てワイワイ楽しみたいもの。しかし、ビデオカメラの主流はいまだにマイクロテープ(記事執筆初出しは2005年の月刊PC
Mode)。撮るのには便利ですが、観るのにはけっこう不便・・AVケーブルやACアダプタを探したり、カメラをテレビに繋いだり・・なんだか面倒。
月刊誌PC Modeの「DVDならまかせなさい」連載記事でも紹介してきたけれど、パソコンを使ってビデオ映像やデジカメ写真からDVDビデオを作ることができる。しかし、パソコンを使い慣れた人には手軽にできても、パソコンは万年初心者、という人にはまだまだちょっと難しくて敷居が高い・・そこで登場したのが、ユーリードシステムズの『デジ物語』。パソコンに不慣れなお母さんやお父さんにも手軽にDVDビデオが作れる、という製品だ。
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「デジ物語」のメニュー画面。 |
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スライドショーの作成方法は、ほぼ画面の指示に従うだけ。とても簡単がウリ・・。 |
この製品、ちょっと変わってる。買ってきたディスクをパソコンの記録型DVDドライブに入れると自動的に編集ソフトが画面上に起動する。可愛いキャラと音楽、大きな文字で使い方をガイドしてくれるので、それにそってビデオカメラをパソコンに繋いだり、DVDにしたいデジカメ写真を選び、簡単な操作でDVDができる。変わっているのは、ドライブに入れた…編集ソフトが入っていたディスクに動画や画像を保存してDVDビデオができること。無事に完成すると編集ソフトは自動的に削除され、ディスクはDVDプレーヤーで再生できるようになる。編集ソフトはパソコンにインストールしない。
これは「プログラムプリライト」(プログラムが最初から書き込まれたディスクの意)と呼ばれ、ユーリードシステムズ社と、DVDのメーカーである日本ビクターが共同で開発した新技術。
『デジ物語』はパッケージで販売され、中にディスクが3枚(編集ソフトが記録されたDVD-RW)入っている。ビデオカメラから動画をDVDに編集する「ビデオカメラ編」と、デジカメ写真をBGM(9曲から選択)付きのスライドショーにする「デジカメ編」が、別々の製品としてラインアップされるわけ。残念ながらビデオとデジカメ画像をひとつのディスクに記録することはできないのが難点。
■ソフトの使用制限は「1回だけ」より
「そのディスクだけ」の方がベター
ユーリードシステムズ社は、ビデオ編集やDVD制作ソフトで知られていますが、『デジ物語』は誰でも使えるシンプルな操作方法を実現するために、最低限必要な機能だけに絞り、使い易く仕上がっている。使い切りの発想も解りやすく、DVDを応援する私としては今後に期待したい商品だ。
ただ、普及するにはいくつかのハードルがあるように思う。
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まずは価格。3枚組で4,170(税込)円の使い切り価格は「ちょっと試してみるか」というには高価過ぎる。「コンビニで買える1枚300円」がターゲットだろう。逆の発想をすれば、メディアが書き換え可能なDVD-RWであり、1枚1000円以上出すのであれば使い切りではダメ(技術的な課題は置いといて)。ユーザーは出かけるたびに撮ってきたビデオ映像やデジカメ写真を追加していける機能が必要だ。メディアいっぱいまで使いたいのだ。また、最初から新しくDVDの作り直しもできないといけない。そのディスクにしか使えない編集ソフトであれば、消費者にとってはソフトが消えることこそが不自然なことで、失敗に対するプレッシャーになってしまう。失敗したら作り直す、一度作った作品も飽きたら作り直す、その分普通のRWよりちょっと高い・・その方が魅力的ではなかろうか。
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