■ユビキタスって言葉、聞いたことある?
「ユビキタス」
権威ある教授さんとか、超大企業の偉いさんが「ITネットワークの未来を語る」っぽい講演によく登場する言葉だ。たとえば、2002年2月にNTTドコモの社長は「NET&COM2002」の基調講演「モバイル・コミュニケーション革命」の講演で「ユビキタス」という言葉を使っている。
動くもの全てを移動体通信が可能なユビキタス化することにより、移動体通信の契約数は5億7000万件まで伸びる、とこんな発言をしている。また、別の講演でインターネット総合研究所の所長はキーワードに「どこでも接続できるユビキタス環境」を、ソニーの安藤社長はコンセプトに「ユビキタス
バリュー ネットワーク」を提案した。なんだかユビキタスって凄そうだ。
■ユビキタスって何?
ユビキタス。ユビキタスの語源はラテン語の「ubiquitous」だ。辞典をめくると「(同時に)至る所にある,遍在する」(EXCEED英和辞典より)とある。つまりいつでもどこでも、だ。数年前までビルゲイツ氏があちこちの基調講演で声高に言っていた「information
at your fingertips」みたいなものか?
IT業界で言うユビキタスとは、個人が複数のネットワーク機器をいつでもどこでも利用できる環境や思想(構想)を挿す。「ユビキタス・コンピューティング(Ubicomp)の実現」とか、「ユビキタス・ネットワークの利用」とか、「ユビキタス化の推進」とか言ったりする。
では、いつでもどこでも接続できるユビキタス環境の身近な具体例をあげてみよう。例えば「次世代携帯電話」「情報家電」「ホットスポット」など。既に携帯電話はiモードなどインターネットの端末として様々なシーンで利用されていますが、あえて次世代携帯電話としているのは、人と人のコミニュケーションやインターネット利用は言うに及ばず、人とモノ(製品)とのコミニュケーションに発展していくことをイメージしている。
人とモノとのコミュニケーション?
なんだそれ。
例えば、携帯電話と家電のコミニュケーションだ。
うげ・・将来、おいらは洗濯機と電話すんのか?
「もしもし、あ、"全自動スカッと青空くん"? ごめんねー、まだ新宿。これから急行で速攻帰るから、Tシャツ洗って待っててよ、じゃねー」・・てか?
会議中に携帯電話が鳴って「あ、うちのビデオデッキからだ・・もしもし。あーおれー。どしたの? おー、おー、新しい連ドラが始まる時間かー。そうだねー、標準モードで録画しといてー。わりーなー。もう少し残業あるからー、じゃねー」・・・てか。
ちょっと違う。しかし概ね合っている(笑)。恐ろしい世の中がやってくるものだ(笑)。もう少し現実的な話をすると、携帯電話で自宅のエアコンのスイッチを入れたり、ビデオの録画設定をしたり、ペット型ロボットと通話をしたり、携帯電話に接続されたカメラの映像を自宅のテレビやパソコンに映すといった諸々。更に、家電のネットワーク化「IPv6ホームネットワーク」を推進する企業のひとつ松下電器産業は、ネットワークで健康診断や医師の往診が受けられる「健康ネット」、電子レンジのレシピ配信や冷蔵庫の遠隔在庫確認が行える「電化ネット」、ネットを通じて留守宅や独り住まいのお年寄りを確認できる「安心ネット」、そしてエネルギー管理や省エネをサポートする「環境ネット」などのコンセプトを打ち出している。う〜ん、少しまじめにイメージできてきたかな?
■もひとつ重要なキーワード「情報共有」
また、もうひとつ重要なキーワードとして、これらの機器はネットワークで相互に情報交換を行うことができるようになる。家電同士、パソコンや携帯電話が情報を共有?
なんだそれ? またぞろ不可解なことを・・。
例えば、自宅にいながらネットワークを使って、医師の往診を受けたとする。そして風邪気味と診断された。すると、エアコンや加湿器などが診断結果を共有・取得して自動連動、温度や湿度を最適に設定し、別居する家族に体調が悪いことを通知するメールが自動送信される・・・、おぉぉぉ、未来的だ。かつてSF映画で見たことがあるかも。人間と機器の共存・協調した次世代の社会環境を創り出そうという考えなのだ。凄いかも・・しかし、キューブリックの傑作『2001年宇宙の旅』のHALを思い出して鳥肌が立つのは僕だけか?
■無線LANとホットスポット
解りやすい例として、真っ先に携帯電話を例にあげたけど、喫茶店や駅、空港などの施設において、パソコンやPDAなどから無線インターネットが利用できる「ホットスポット」が注目を集めている。ここで言うホットスポットとは802.11bやBluetoothなどの無線LANを介して、インターネットの利用が手軽にできる場所を指す。ある意味、ホットスポットはユビキタス実現のキーを握るポイントのひとつかもしれない。
インターネットマンが執筆した
セキュリティの教科書 好評発売中
体系的に学ぶ
インターネットセキュリティ
神崎洋治、西井美鷹著
日経BPソフトプレス 1,890円
・ファイアーウォールのしくみ
・ウイルス、ワンクリック詐欺
・プライベート画像や
機密情報流出事件
など、セキュリティのしくみを体系的に解説、対策を初心者にも解るようにていねいに、かつ、詳しく解説。
>> 詳細を見る
携帯電話端末とは別のアイテムも選択肢として必要だからだ。その意味では、電柱や鉄塔などで作業する人のコミュニケーション・ツールとして既に実用化されているウェアラブル・コンピュータ(着用型コンピュータ)もユビキタス社会の実現にはキーとなる端末かもしれない。腕時計型、ベルト型、チョッキ型など着用できる端末装置で、ホットスポットに近づくと腕時計型の端末に地域情報や最新のメールが自動的に着信するものなどが試作されている。
以前、某情報番組でウェアラブル・コンピュータが未来のパソコンだと報道していた。そこに太陽の笑顔西田ひかるちゃん登場。なんと、基盤の配線を書いたワンピースを着用・・司会者驚き「これが未来のコンピュータですかぁ・・」。僕、絶句。着用型とはそういう意味ではない。
ユビキタス社会はネットワークの進化によって利用できる人が限定されてしまう環境ではいけないということを付け加えたい。いつでもどこでも利用できるネットワーク環境を作ることで、むしろパソコンや携帯電話が使えない人たちにも、安価で簡単に利用できる環境を作ることが最大のポイントなのだ。これ以上、デジタルデバイド、インターネットデバイドを拡大しないためにも、本当の意味で誰にでも使えるユビキタス環境が望まれる・・そう考えるとなお一層、遠すぎる未来のように思えるのは僕だけか?
※「仕事とパソコン 」誌で連載のIT用語辞典(著作:神崎洋治)を編集して掲載しました。