■PSX登場
既にニュースサイトが報じているように、通信・情報・映像の総合展示会「CEATEC
JAPAN 2003」でソニーのPSXが正式発表になった。かねてからいろいろと報道されてきた。大ヒットゲーム機であるPlayStation2(以下PS2と表記)の後継として、DVDレコーダーとHDDを搭載した上位機種か?とも注目されたが、発表されたPSXは「これはPS2・・つまりゲーム機の後継ではなく、ゲームもできるHDD搭載DVDレコーダー・・あくまで家電です」(ソニーマーケティング広報)というものだった。PSEではなくソニーマーケテングが発売するのだからそれは至極当然だし、インタビュー記事などでそのことは語られてきたのであるけれども、DVDレコーダーとしてPSXが登場することは、急成長しているDVDレコーダー市場に投じられる一石の波紋となりうるのじゃぞ。
PSXの写真や仕様はZDNetの記事「ソニー「PSX」は7万9800円から」
や「「PSX」正式発表、“ポストビデオ”を狙うソニー」
、 PlayStation.comでも「ポスト“ビデオ”を狙う『PSX』いよいよ発表!!「CEATEC
JAPAN 2003」レポート」にも掲載されているので参考にすると良いじゃろう。(なんで長老喋り?)
しかし
「だからぁ、PSXってぇ、早い話ぃ、いったいなんなのぉ?」
というせっかちなあなたには、ここではこんな説明が手っ取り早いだろうか。
PSXとは、PSとPS2のゲームが走る、ネットワークに対応しているのでPSBBもできる、そんなHDD搭載のDVDレコーダー。DVDはDVD±RW対応(デュアルRW)・・-Rや+Rにも、もちろん対応、でも当初は-R/-RWだけ対応かも・・テレビ録画はもちろんできまっせ、というシロモノである。で安い。破格だ。160GB搭載モデルで79,800円。
言い換えれば、そろそろDVDレコーダーが欲しいんだけどどれがお勧めかな、安いヤツね、日本のメーカーで機能もそこそこなヤツ・・・に応えられる(はず)のDVDレコーダー、オマケにPS2(BB)の機能付き・・。
こんなトコロだろうか。
ほえ〜。ってことはこれはなかなか衝撃な商品なわけ?
と、こうくるでしょ。そうなのだ。いろんな意味で実際、衝撃なわけです。DVDレコーダー分野からみれば、PS2のゲームができることなんてものは所詮オマケで、恐ろしいのはまずDVDレコーダーで後手に回っていたあの、あのソニーがDVDレコーダーでちゃんとした機能付き(HDD搭載してEPG対応とか、ね)の商品を、こんな安い価格で発表してきたってこと。ソニーブランドひっさげてね。しかも、ゲーム機ではなく家電と言い張っちゃってることで、店頭ではDIGAやRD-Styleと同じ棚に置かれるってこと。もちろん買いに来るのは安いDVDレコーダーが欲しい、って人ばかりじゃないけれど、とりあえず10万円以下で買いたいと店に足を運んだ多くの人に、PSXはインパクトを与えるのには十分なスペックといえるわけだ。(これ買って今あるPS2をオークションで7〜8千円で売っぱらえば、予算はえーと・・)
実は、PC Modeの取材で先週ソニーマーケティングに「スゴ録」と「コクーン」の話を聞きに行ってきたんだけど、そこで聞いたソニーのDVDレコーダー戦略の柱は新ブランドとなる「スゴ録」だった(PSXは発表前だったしね)。で、160GBのHDD搭載DVDレコーダーは実売10万円弱で他社モデルにぶつける勝負レンジだ、という話だったわけ(詳しくは今月発売のPC
Modeの僕のコラム参照)。つまり、PSXは自社ブランドであり、DVDレコーダー市場開拓の急先鋒である「スゴ録」の同等機種でさえ、下回った価格で出てくるのだ。どういうこと?
意味解らないでしょ。 いろんな意味で衝撃!!
ほかのメーカーからはきっと「年末商戦の目玉となるDVDレコーダー市場の価格破壊をする気か?」ときっと言われるだろうし、ともすれば自社プロジェクトであるスゴ録やコクーンとも混同されたり、DVD戦略の柱である「スゴ録」ともバッティングする。むしろスゴ録にはメモリスティックやDV端子がない(そのかわり、スゴ録にはおまかせ・まる録と超高画質モードがあるというわけなんだけど)。
■PSX回想・・・買いそう?
以下は、PCModeという雑誌で2ヶ月前に掲載した僕のコラム「ビジネスITトレンド」から。PSXと、それに至るソニー製品をざっと回想しよう。
ソニーは、5月28日に開催された同社の2003年度経営方針説明会において「PSX」を初公開した。このPSXはゲーム機でもあり、家庭用DVDビデオレコーダーでもある。つまり、プレイステーション2のゲームが利用できて、更に地上波とBS放送(アナログ)を受信するチューナを内蔵し、120GBのHDDとDVD(DVD±RW/-R)に録画できる。年内に国内向けに発売、2004年に欧米で発売される予定だ。同社は「PS2の技術を利用してどこまでのデジタル家電ができるのか」をテーマに開発してきたとしており、現段階の情報ではゲーム機+ネットワーク対応のDVDレコーダー機の域を出ていないものの、「いままでのデジタル家電やDVD、HDDレコーダーとはまったく違うものになる」としており、今後のソニーのDVD戦略に期待が高まる。
まぎれもなく僕が書いた言葉だ。
本当にソニーブランドに期待している人は多いんだな。特にDVDなどの光り物に関して、同社のカリスマ性はすごいものがある。今まで、それほど大したラインアップをしていなくても、最近ようやく消費者のニーズに近い製品が発表された始めたばかりであったとしても、アンケートで今後もっとも期待しているメーカーは、という問いに対しての回答は「ソニー」になる。なんでなんだ?
そこで同記事で、こうレポートしている。
ソニーは独自のマーケティングと開発コンセプトで、パソコンやネットワークと家電、AV機器などの"融合"や"共有"を進めてきた。パソコンの大ブランドに成長したバイオシリーズは、パソコンやインターネットの基本的な機能はもとより、映像とAV機能に秀でた製品ということで高い評価を得ているし、そのイメージは消費者に定着している。また、家庭内のパソコンとAV機器やDVDレコーダー、チャンネルサーバをホームネットワークで繋げて、データを共有して楽しもうというコンセプトを製品化する上でも先行しているといえるだろう。その代表とも言えるのが同社の「コクーン」シリーズだ。昨年リリースされたチャンネルサーバ「CSV-E77」はHDDレコーダー機能を利用し、自分好みの番組を自動で集めてくれる(録画してくれる)TV機能を拡張する製品という位置づけだったが、更に今年の4月、DVD録画が可能な機種と、動画や画像、NetMDなどの音楽の再生、メールの送受信機能などを備えたホームシアターシステムの2製品をラインアップ追加した。また、ソニーの家電用DVDレコーダー「RDR-GX7」は国内初、待望のデュアルRW(DVD±RW)対応で、この製品が市場で普及した頃にPSXの製品発表のタイミングになる。
言ってみれば、あくまでもコンセプト先行で未来型製品を投入し、そのブランドに「コクーン」の名前を付けた。Web(蜘蛛の巣)に対してコクーン(繭)だ。パソコンとAVとインターネットを融合する、誰でも考えがちで現実的な近未来像だが、WebTVやインターネットアプライアンスの失敗がちらつく昨今では、成功の目ははじめから乏しい。そこにあえて挑戦した真意も疑問だが、結果的にホームシアターという分野を複雑にしたとみる意見もある。
さて、DVDレコーダー市場において、PSXの発表はどのような意味があるのか?
プレステでDVD普及の突破口を開いた同社が、万が一DVDレコーダー機能を持つPSXを再び戦略的な価格で市場に投入することができれば、2004年のDVDレコーダー市場の動きは大きく変わるだろう。
そんなふうに記事では結んだ。
以降、DVDレコーダー市場の起死回生のブランドとして、ソニーはこれから「スゴ録」を発信させる。これについてのソニーの取材は再来週に発売されるPC
Modeの僕のコラムを読んで欲しい。興味深い話も載っているし。そしてその「スゴ録」をひっくり返しかねないPSXもまた、年末に発信させる。
PSXが実際に発表されて舞台は整った。DVDレコーダーに対しての一般市民の注目はますます高まり、注目は学生などの低年齢にも浸透する。更に、PSXが年末商戦に潤沢に供給されれば、10万円以下の価格レンジでは価格争いが一層熾烈になるかもしれない。PSXが品薄で「待ち」になってしまったら市場は凍結かも、という危うさもある。ソニーという企業とっては「PSXでもスゴ録でもコクーンでも自社製品が売れればヨシ」ということだが、PSXの発売日を含め、年末商戦の各社、そして消費者の動向がいつになく楽しみではある。 |