お待たせしました。「体系的に学び直す
デジタルカメラのしくみ」が発売になりました。
■店頭の憂鬱
ある日の某自作系パソコンショップ店頭にて。
DVD-Rメディアコーナー
1x等速(激安メディア) 98円
1x-4x倍速(激安メディア) 168円
1x-4x倍速太陽誘電(国産) 320円
太陽誘電のメディア、品質も安定しているし、欲しいなぁ。でも、台湾製と比べると倍額ドン。割高だなぁ。とはいえ、安物買っても、エラーだらけでうまく書けなかったら意味がないしなぁ・・。
あ〜あ、迷う。どうなんスか!? 激安メディアって!!
と、まぁ、ユーザーの迷いはこんなところだろう。かく言う僕もよく迷う。
■太陽誘電に聞く
実際のところ、DVDドライブ製品の主流は今やすっかり8倍速だが、メディアはようやく4倍速が主流になったところ。富士写真フィルムの広報曰く「8xディスクは発売が始まったばかりであり、主流になるのは早くても今年末だと思います。DVD-Rの場合は一度作成したらその後の使い勝手は高速メディアも通常品も変わらないので、価格差があればできるだけ安いものを求める傾向が見られます」とのこと。つまり、ドライブはとりあえず8x対応ドライブを買っておいたとしても、メディアが高ければ当分4xメディアで書き込みし、ともすれば安ければ等速メディアでもいいです、という感じがおおかたのユーザーの実状なのである。前々回のコラムでも書いたが、「実質」的なDVDドライブの高速化のカギを握っているのは、案外メディアメーカー(メディア単価)だったりするわけである。
というわけで、メディアメーカーの老舗、太陽誘電にいろんな話を聞いた。太陽誘電は、世界で最初に記録型CDの原理を使ってメディアを作り、販売したメディアメーカーだ。社名はなんだか聞き覚えがないかもしれないが、国内向けブランドの『That's』と言えば解るだろう。技術グループ
R技術部 主任研究員 藤井徹氏が応対してくれた。
■国産メディアと激安メディアの違い
取材に応えてくれた太陽誘電株式会社 技術グループ R技術部
主任研究員 藤井徹氏(左)と取材をセッティングしてくれた総合戦略企画室 係長 合田裕彦氏(右)。 |
海外から入ってくる激安DVDメディアと太陽誘電製の国産メディアとでは、実際にどんな違いがありますか?
まず、当社にはメディアの開発者としての自負があり、そして、メディアの開発から製造ラインまで自社開発ゆえに得られる安定性には絶対の自信があります。(藤井氏)
なるほど、その辺を具体的に聞いていきましょう。激安メディアについてはどう思いますか?
激安メディア陣営も日本のユーザーが品質を重視するということをよく理解していると思います。正直言うと、激安メディアも、意外と良い品質のものをよく選別(吟味)して、日本市場に持ち込んでいるなぁ、と感じます。米国など海外で売られている同じ激安メディアメーカーの製品は信じられないくらいレベルが低く、明らかに日本市場のものとは違うなと感じますから。特にDVDはエラー訂正能力(多少書込がしにくくても、リトライしたり、モードを変更して記録する能力)が高いため、低い品質のメディアでもなんとか書いてしまったりしますから・・。ただし、当たりのメディアはそれでいいかもしれませんが、品質のバラツキは大きく、ハズレのメディアもかなりの割合で含まれています。
僕も通常は『That's』を使っていますが、実はたまにあまりの安さに激安メディアに手を出してしまいます。たいていは問題がないのですが、突然書けない(書込みエラーする)メディアがゾロゾロと出てきたりします。大容量だけにダメージも大きいですね。ちなみに、今、おっしゃられた、ひどいメディアとはどのようなものを指しますか?
僕が主に愛用しているのは、太陽誘電の4倍速DVD-Rメディア。スピンドルとか、バルクとか呼ばれるタイプで、10枚セット。タイトルがディスクラベル面にプリンタ印刷できるタイプ。2800〜3200円で買っている。 |
メディアの品質を決める2つの因子があります。設計上の因子(基本性能)と生産上の因子(製造上の安定度)です。言ってみれば、日本に輸入されている激安メディアに多い傾向としては、設計上の因子が悪いけれど、生産上の因子は良いものを選択して持ってきている、という感じです。今、言ったように、DVDはエラー訂正能力が高いので、低レベルのものでもなんとか記録ができるし、再生ができますが、その他にプラスアルファのなにかの要因が重なったときには、それがエラーになって現れるわけです。プラスアルファのなにかとは、ノイズがのった、とか、ディスクの表面が軽く汚れた、とか、まぁそんな感じで。
デジタルデータは0か1ですよね。言い換えれば、物理的にアナがあいているかいないか・・。そんな単純なことに、どうして品質の善し悪しが関係するのか?
と疑問を感じるユーザーも多いでしょうね、きっと。
そうかもしれません。が、マクロ的に見た場合、高速で回転するディスクの伸縮率が少ない、つまりディスクが伸びる伸びないといった点や、歪む、バランスが悪いなどの要素があります。生産上の因子で言えば、記録層の塗りムラ、記録できるところとできないところがある、などが解りやすい例になると思います。
解りやすいです。
ミクロ的な話をすれば、ある転送レート・・メディアからみると記録レート、でドライブは書込みを行いますね。そして、入れた穴の長さでデータを読み取るわけですが、穴の長さが違ったり、ズレると違う信号として読んでしまう可能性があります。違う信号として読めばエラーになる。高速な書込になればなるほど、高速な記録レートでレスポンス良く正確に穴を入れなければいけません。表現が難しいですが、ドライブ側から見ると良いメディアとは「書け、と言ったときにちゃんと書けるメディア」とでもいうんでしょうかね(笑)。
御社の場合、国産メディアという点も最大のアピールのひとつですが、国産の良さはどんなところにあるのでしょうか
メディア開発メーカーだからこそ中身を熟知し、国産だからこそ開発者がラインを作れ、管理もできる、ということです。あまり知られていないことなんですが、当社はCD-Rドライブを作っていたこともあるんです。
知りませんでした(笑)。
ですから、ドライブからみたときのメディアがあるべき姿というか、ハードからみたときの理想のメディア設計もできると思っています。具体的には言えませんが、そういう意味で「設計の段階で、ラインはこういう風にしないとダメですよ、これをやってはいけませんよ」という品質管理ができます。
TQCが行き届き、品質のばらつきが少なく抑えられている、といったところでしょうか。僕の経験上から言うと、激安メディアでトラブったときの症状としては、そもそも途中でエラーして書込ができないというのがあります。これは比較的解りやすいし、ダメージはメディア単価だけで済みますから軽度なトラブルと言えるんでしょうけれど。ほかには、書込にひどく時間がかかる、というトラブルもありますね。中には1枚焼くのに通常の3倍くらい時間がかかったとか。
記録速度を遅くしないと正確に書くことはできませんので、予め記録速度を落とすことがありますね。
次に、書込はOKだったけれど全然再生できないというトラブル。書き込んだ後、念のため読み込みテストしたらダメだった、というならまだマシですが、素のデータを消した後になって、読めないことが解ったとなると損害は大きい。更に結構多くて困るケースが、ディスクの外周を読みに行くとエラーになるケースです。この場合はたいてい素データもなく、あとの祭りです。
リムーバブルディスクはハードディスク(HDD)に比べるとエラーが多いんです。でも、高いエラー訂正能力でカバーしているんです。エラー訂正できる範囲のものには差異がなかったものが、あるレベルを超えるとデータが化けてしまうんでしょうね。そうなるとエラーになる。ビデオで言えば画質の劣化が発生するわけです。
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