■DVDとDivX
DVDの話題でこれから盛り上がろう、というときになんだが、なにやら話題のDivX対応DVDプレーヤーを借りることが出来たので感想なんぞを書いてみよう。DivXプレイヤーは昨年末にバーテックスリンクがDivX Videoの再生に対応したDVDプレーヤー『KiSS DVDプレーヤー DP-450』を発売(ZDNETの記事)すると発表したのがはじまり。『DP-450』は同社の直販サイト「イチオシドットコム」にて4万9800円で販売されている。この製品、米Sigma Designsが開発したプログレッシブDVDデコーダチップ「EM8500」を搭載しているらしい。なつかしや米Sigma Designs。僕がPC-9800シリーズ用のMPEG-1再生ボードを商品化している頃に提携していた会社で、何度かミーティングに足を運んだものだ。
それはさておき、借りたのは『DP-450』ではなくて、長瀬産業が販売するMOMITSU製DivX再生DVDプレーヤー『DVD-V880』だ。これは注目だ。

『DVD-V880』は、基本的なDVDプレーヤーの機能を持ちながら、DivXで作られた動画ファイルを再生できる民生用機器だ。正確には、DVD、MPEG1、MPEG2、MPEG4(DivX 4.02、5.02、5.03)、WMA、MP3、JPEG　PictureCD、Audio CD、VCD、SVCDに対応する。いや見事。なんと言っても特筆なのはDivX対応(WMAに対応もさることながら)。AVIやMPG拡張子のDivX動画を、通常のISOフォーマットでCD-ROMやDVD-Rに保存して『DVD-V880』に挿入すると、自動的に認識してファイルリスト(インデックス)が表示される。表示されたファイルからひとつを選択すると再生がはじまる。まるで簡単なのだ。

長瀬産業のDivX再生DVDプレーヤー『DVD-V880』。今までパソコンの中だけでの楽しみだったDivX動画ファイルを大画面テレビで楽しめる。価格は25,700円・・安い(2003年3月)。

そもそもDivXとは何か?
数年前、DivXとは、北米の家電量販店サーキットシティがはじめた同名の企画とはまったく無関係で、MPEG4をベースにした動画圧縮技術のこと。例えば、DVDビデオの映画であれば、2時間のタイトルが4.7GBまたは2層で9GB程度の容量内で圧縮されているわけだけれど、DivXの圧縮率はもっとずっと高くて、映画1本をCD-ROMに入れてしまうぐらいの容量まで圧縮しても、パソコン画面で楽しめる高品質を維持することができる。もっとも有名なところではアングラだがWinMXやWinnyなどP2Pファイル交換ソフトでやりとりされている映画やアダルトなどの動画ファイル。そのほとんどがDivXだ。P2Pファイル共有でやりとりされている映画については著作権上問題があるので勧められないが、今後はほかにもDVDからリッピングした映像をDivXで再圧縮してCD-Rに入れて保管したり、それを持ち歩いて電車や飛行機などでノートパソコンで再生して楽しんだり、といった使い方がされたりもしている(この特集でも後日紹介する予定だがホロンの『DaviDeo DivX』などがバックアップ/変換ツール(プロテクトのかかっていないDVDビデオおよび、ハードディスク上にあるDVD-Videoデータにのみ対応)として販売されている)。
一方で、家電用DVDプレーヤー/レコーダーにもDivX対応の動きが見られている。例えば、DivX対応のプレーヤー/レコーダーには今後は正式に「Home Theater」ロゴが記され、それが標準再生のDivXの基準として今後は普及していくことを示唆している。「Home Theater」用の設定は720x480(30フレーム)と720x576(25フレーム)が用意され、ビットレートは4Mbps以下(こんなに高ければDVDビデオだが(汗;))、「DivX 5.0.3」で簡単に設定できる。
今までパソコンの小さい画面で観るのが当たり前だったDivX動画が、リビングの大画面テレビで楽しめるようになる。これはヘビーなWinMXユーザでなくてもワクワクすることだ。早速、『DVD-V880』をうちの32画面ワイドテレビに接続し、山岸を呼びつけた。

■DivXを家庭用テレビで観る、そのクォリティ
こうしてDivXコーデックで圧縮された映画のCDを再生すること20分、それだけ経てば、このDivXプレーヤーが持つ魅力と様々な可能性で話が弾んでいた。結果から言えば、山岸がWinMXで入手した映画は、『DVD-V880』でとてもきれいな画質で大画面テレビに再生された。WinMXで入手した映画だけに、このような楽しみ方は決して勧めないが、DivXが低容量ながら家庭用テレビ再生にも十分活用できる技術であること、『DVD-V880』がそんな楽しみ方に答えてくれる機器であることが確認できた。
実はおおかた家庭用大画面テレビで見るとビデオCD程度の画質だろう、と内心思っていたのである。しかし、予想は良い方向に反し、DVD画質ほどはチト無理だが、暗いシーンを除けばほとんど一般的には気になるような画質の乱れやブロックノイズは少ない。字幕もクリアだ。もちろん、DVDリッピングや高度な画質でキャプチャされたコンテンツ(つまり元々良い画質でエンコードされたDivXファイル)なら、大画面テレビでも楽しめるレベルにある。そもそもオタクやマニアが好き勝手にエンコードして配布しているファイルがこれだけ高画質に再生できるのだから、ビジネスベースでDivXエンコードしたコンテンツは、十分流通に耐えるだろう、というのが率直な意見だ。また、ブロードバンド時代となりインターネット回線が高速化されているならば、家庭用テレビにDivXストリーミング再生するインフラも考えられる範囲になったのではないかと、ワクワクしてくる。ビデオ・オン・デマンドである。

もちろん、WinMXで交換したファイルのうち、ユーザが勝手に大画面テレビで楽しむことを著作権法上認めていないコンテンツであれば、それは違法なのでやってはいけない。しかし、これほどの技術やインフラを抹殺することはあまりにむなしいので、ぜひとも合法的に正規のビジネスや趣味で楽しめる世界として発展して欲しいモノである(この特集の後半でまたDivXを取り上げるからお楽しみにね)。 それはさておき、もちろん山岸が持ち込んだWinMXでゲットした動画ファイルのすべてを『DVD-V880』が再生できたわけではないし、今現在は誰が再生を保証してくれるわけでもない・・WinMXの世界では当然のことだが。しかし、これがビジネスベースで展開されることを仮定すれば、再生の標準化はかなり高いレベルで実現可能だろうなどと勝手に思いはせたりするのである。あぁ、楽しい。前述の「Home Theater」規格などが普及すれば、更に互換性は上がる可能性は高い。(ちなみに『DVD-V880』はXviDには対応していない)

さて『DVD-V880』の話題に戻すと、DivXの再生については僕的には及第点で十分実用的である。コンテンツの画質が良ければ、大画面テレビで再生しても迫力の映像が楽しめる。DivXファイルをたくさん所有していたり、これから活用したいと思っているなら「買い」だと思う。特に、日本製のDVDプレーヤーを1台持っている人のセカンドマシンにも更にお勧めだ。なんといっても価格が安いこともうれしい。

■惜しい点は2つ
ひとつはレジュームがないこと。
動画再生中に一旦止めて、翌日、続きを観たいというときに中断したところからはじめることができない。中断が数分であれば「一時停止」ボタンでこと足りるが「続きは明日」とか、「続きはまた今度」というレベルでは一時停止というわけにもいかない。停止を押してしまえば、続きを観たいときは最初から早送りを行っていく。早送りボタンを押すと、1分ほどジャンプするので、40分の地点から観たいときは、約40回早送りを押す。押した回数をバッファしないので、ゆっくりと押していく必要がある。他の会社の製品では、時間指定でのジャンプしかない機種もあり、逆に『DVD-V880』のDivXの早送り巻き戻し機能(1分ジャンプ)はメリットのひとつとも言えるが、やはりレジューム機能は欲しかったところ。

もう1点はインデックスが日本語対応していないこと。 CD-ROM1枚に1動画を収録している場合は全く問題にならないが、例えばDVD-Rに3タイトル収録している場合など、日本が「?」で表示されてしまうのでどれを再生していいのか解らない。海外製の民生機器に日本語漢字フォントを持て、というのもナニな話だが、ぜひ対応してほしいところだ。もちろん、ファイル名の所々に英語をいれておくことでとりあえずの回避は出来る。

■デジカメ画像の再生用にも使いたいのだ
『DVD-V880』には、もうひとつ良い機能がある。JPEGなどの静止画を再生する機能だ。デジタルカメラで撮影した画像は、こまめにプリンタなどで印刷する人を除いて、たいていはディスクの隅に置かれたきり、忘れ去られてしまう。家族で出かけた画像や記念に撮った画像が、ディスクの整理をしたときにゾロゾロと出てきてビックリなつかしい、といった具合だ。しかし、そんなデジタルカメラ画像をCD-ROMに保存しておくだけで、いつでもテレビ画面で再生できるとなると、これはうれしい機能である。早速、今まで家族を撮った写真画像をCD-Rにたくさん焼き、家族をリビングに集め、『DVD-V880』にCD-Rを入れてみた。動画ビデオ同様にインデックスが表示されるので「ALL Play」を選択、静止画の再生が始まる。家族で「あのときはどうだった」、「ずいぶん小さかったなぁ」などどワイワイと会話が進んだ。基本的な機能としては順調に動作し、なかなかに楽しめる。ただ、途中でJPEGコードのエラーか再生できない画像があるとエラー表示が出て自動再生のスライドショーは中断されてしまった。その先をスライドショー指定できない。
そこで、要望がふたつ。折角のこの機能、より楽しむには「フォルダ管理に対応」して欲しい。例えば、デジタルカメラで撮影した画像はたいていは連番でファイル保存される。動物園、プール、卒園式、サッカーの試合、こういったイベントごとに、フォルダを作り、連番のデータがパソコンのディスクに保存されることになる。『DVD-V880』の場合、フォルダ内の画像も読めるのだが、すべてのフォルダの画像をソートして、「ALL Play」する。すなわち、前述のイベントごとのフォルダをCD-Rに焼いたとすると「動物園」の一枚目、「プール」の一枚目、「卒園式」の一枚目、「サッカーの試合」の一枚目、という順に再生される。もともとフォルダには正式に対応していない旨、ホームページにも書かれているが、この画像再生機能、便利だからこそ、ぜひともそこまで対応してくれるとこの機種の価値としてはググッと上がるように思うのである。もちろん、僕のようにデジカメ画像を一度に大量にCD-Rに焼こうとする不精者ではなく、出かける事にCD-Rに焼いて保管しているような人にはこの機能は十分実用的で楽しめる。
更に、デジカメ画像の再生ではなく、インターネットで拾ったアダルティな画像やアイコラ画像を大画面で見たい、という目的であれば、ファイル名さえ揃えておけばゴリゴリ使い倒せるだろう。

次回は、DVDオーサリングとDVDメニューの作成について解説します。

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