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進めインターネットマン 
Text : 神崎洋治 (TRISEC International,Inc.)
vol.238 2004年2月18日

第238回: ネットのチケット販売花盛りに苦言を呈す
〜W杯予選チケットなど抽選チケット販売の怪奇〜 の巻

日本代表vsオマーン代表が行われた埼玉スタジアムのバックスタンド中央(試合当日)。アッパー(二階)席に比べて、ロア(一階席)に空席が目立つのはなぜだろうか。しかも、人気の高い前列中央付近ほど空席がある。
「多くのファンに良い席で観てもらおう」といった気持ちは、この現状からは組み取り難いのではなかろうか。
(クリックすると大きな写真が見られます)
※この写真のみ後日談として本ページのコラムに追加。

今回は、プラチナ・チケット販売でよく採用される、ネットを中心とした抽選方式のチケット販売についての話し。 ネットでのチケット販売をこれからも利用していきたい故の苦言。 サッカーや演劇、ライブを愛すべき故のアンニュイ。

■その前にロータスの話し
ノスタルジックな気分になってしまった。


『モデル・カーズ』3月号。ピータコリンズのインタビューを持ってくるとは、「TEAM LOTUS FOREVER!!」の特集タイトルにふさわしい!! 

あぁ、暗い。寂しい。3月号の自動車模型の専門雑誌『Model Cars』のせいだ。この号の特集は「TEAM LOTUS FOREVER!!」。なんてソウルフルな特集タイトルだろう。表紙にはロータスF-1後期〜末期のマシンが並ぶ。うしろに見えるのは、かの愛すべきロータスホンダ99Tだ。F-1ファンとして生涯最も愛する美しく崇高な、1000馬力のモンスターだ。1987年、日本人初のF-1フル参戦を発表した中島悟が獲得したシートが、ずっと愛し続けてきたロータスの最新マシンであることを知ったとき、僕は喜びを隠すことはできなかった。カラーリングはシブさの究極JPSのブラックカラーから一転、キャメルのスポンサーを得たイエローになった。パートナーのドライバーはアイルトン・セナ。現在も語り継がれる天才。今からちょうど10年前。イタリアはサンマリノ共和国、タンブレロの高速コーナーでクラッシュし、逝ってしまった。

しかし、ロータスはこの(僕にとっても)絶頂期を境に、坂道を転がるように衰退し、差し伸べる手もないまま1994年本家ロータスF-1としては消滅してしまう。
『Model Cars』は。当時のチーム・ロータスの監督ピーター・コリンズを引っ張り出してきて、インタビュー記事を載せているのだ。あぁ、どれだけあんたの話しが聞きたかったことか。これでもまだ、どれほど聞き足りないことか。ロータスの破綻の一端を語る彼の記事を深夜に読み、ひとしきり落ち込む・・僕。かかるBGMは永チャンの「フラッシュ・イン・ジャパン」・・今日の仕事は切り上げて、1987年のF-1全戦のビデオ(とってあるのだ)を朝まで観てやろうか・・泣きながら。くそ〜。

■W杯チケットは毎度大騒ぎ
というわけで(どういうわけだ?)、今日はW杯の予選である。2006年、ドイツ・ワールドカップ・サッカー大会の日本の挑戦がようやく始まる。待っていたぜ。埼玉遠いぜ。駅からスタジアムまでも遠いぜ。きっと寒いぜ。でも、行くぜ。ピーター・コリンズの記事でヘコんだ僕が回復するにはこの話題しかない。
というわけで(どういうわけだ?)、チケットの話し。W杯と言えば、2002年日韓ワールドカップでのチケット騒動が思い出される。あのときは、インターネットでチケットをとるためのスキルを身につけている人が結果的に勝利(チケット獲得したってことね)したのだ。これは一種のインターネット・デバイドだった。W杯チケットの発券所には外国から来たサポーターの人がチケットを買えなくて大勢困っていた。異国まで来て、インターネットでどうやって買えばいいのか、誰も結論は出せないでいた。

僕の話に戻そう。僕もインターネットマンであるからして、なぜにインターネットが混みあうのか、混みあったサーバ上では接続してからチケットを獲得するまでにどういう処理プロセスがあって、どういうことをやってはいけない(買えなくなる)のか、ということを少しばかり普通の人より理解していた(今もしている)。だから、運良く日本戦やアルゼンチン戦を含めてW杯のチケットは十分にインターネットで入手することができた。僕にはそれで十分だったから、W杯のチケットの入手情報をせめて、インターネットを使っている人にだけでも広く伝えたいと思ってこのインターネットマンのサイトでもリアルタイムでチケット売り出し情報をご案内したのであった(当時)。あの数週間は実に奇妙奇天烈だった。チケットが売り出された情報に、そしてゲットできたこと、できなかったことに多くの人が一喜一憂した。実はたくさんのメールをもらった。「本当に参考になった」「諦めていたのにおかけで2試合も買えた」「ドイツW杯でもお願いします」などの喜びや励ましのお便り(メール)があった。驚いたことに「そんな情報を流すからチケット販売のサーバが混みあうんだ。やめろ」という人もいた。情報化社会にあって、ずいぶんと呆れた考え方の人もいるものだと思った。

■抽選方式が生み出す歪み
ドイツW杯の予選が始まる今日までの間にも、国立競技場や横浜で開催される日本代表戦はプラチナ・チケットになった。トヨタカップも激戦だった。演劇やコンサートにも行くのでインターネットでチケットを購入する機会は多い。インターネットのチケット販売は病巣を抱えている。すごくひどい世界だと思う。それを今日はなんとなく話したい。
僕はITのコラムニストだから、サーバのしくみは少しは理解している。だから、その知識を応用して混みあったチケット販売サイトでチケットを獲得するちょっとした工夫ができるし、そのお陰でたいていプラチナ・チケットは入手できた(ダフ屋じゃないよ)。しかし、抽選方式だと手も足も出ない。だからって、このコラムを書いている訳じゃないよ。それだけは予め言っておく。また、僕はチケット獲得の専門家ではないから、チケット販売全般については、実は書いていることに自信や確信はない。だから、ひょっとしたら事実と異なるかもしれないが、よくネットでチケット販売を利用していて不満を感じる一市民として、今の現状への愚痴を言いたいのである。

■プレはいかんよ、プレは
まず、プレリザーブとか、プレオーダーとか、そんな風に呼ばれている制度がある。一般の発売前に完全抽選性で行われる。そのイベントのチケットをどうしても入手したい人が申し込んで、当たると買える。しかし、この制度には大きなハンディがある。席位置が選べないことだ(価格を左右する席種は当然選べる)。「当たったよ、おめでとう、ほら」と、勝手に決められた席のチケットが送られてくる、もしくはコンビニなどでは、既に決められた席で発券される。もちろん良席が来た試しがない。最近、インターネットでの販売導入が進み、特に顔を付け合わしたり、空席を照会したりしなくなったせいか、プレで人気薄の席をまずさばく、と思われるこの手法がどんどんと横行しているように思える。選べない人にまずは悪い席から割り当てていく節だ。

本当に欲しくて、楽しみにしていて、ようやく当たった人に「はい、最後尾の端の席」とか送りつけてくる。売れ残ったら困る席を抽選に回している節がある。(僕や僕の周りの人がたまたま、そういう経験をしただけだと信じたいが、何十回という経験の中で良席は一度もない。本当にひどい席ばかりだ) オークションでこういうコメントがある「プレ××での当選分ですから良席が期待できます」。これは逆だ。注意しよう。本当に好きな人はプレなんとかは利用してはいけない、と僕は思う。

実際に、プレなんとかで当たった席より当日券の方が良席だったこともある。ひどいケースだと、前列と最後列付近や端だけに客が入っているイベントがある。最後列付近や端はネット販売で割り当てられた席、前列は窓口で席位置確認で売れた席だと思う。
有名なチケット販売サイトではネットでも席が選択できることは多い(当然なことのハズだけど)。つまり一般発売で購入する際は席位置が選択できるケースだ。プレで当たった後、一般発売日に購入可能な席をネットで調べて、プレで当たった席と比較してみると良い。かなりの確率でがっかりできる。


■買い手からすれば、良い席が欲しいに決まっている
ちなみに、いろいろなチケット販売サイトがあるが、主催者から割り当てられる席がチケット販売サイトによって異なるので、どこで買っても同じなんて考えないことだ。全然違う。これはチケット販売ネットワークとの力関係だろう・・・きっと。
オークションをみるまでもなく当然のことだけど、チケットの席位置は価値を大きく左右するものだ。同じ価格のS席やSS席でも、前、中央、端、後ろでは実際の価値は違う。それなのに購入時には席が選べないのは商取引上フェアではないと感じるのである。しかも、発券したら変更や返品はきかないと言われる。当日券があっても、だ。今時、深夜にインフォマーシャルしている妙なダイエットマシンだって、気に入らなかったという理由で1週間以内なら返品を受付けてくれる。もし、これからも一方的に席を割り当てておいて返品させないと言うのなら、もっと席種を細かく割って価格も細かく設定して、お客に選ばせるべきである。最前列と40列目が同じ金額なのは誰が聞いても変だろう?


■W杯予選チケットにも完全抽選性を導入
今回、JFA(日本サッカー協会)は、今回のW杯予選のチケットを完全抽選性にした。2002年W杯以来、混乱が続く日本代表戦のチケット争奪合戦、ダフ屋やチケットゲッターの横行に歯止めを掛けるためだろうと予想された。公正にチケットが行き渡るように、という名目だったかもしれない。
入場券の登録制抽選販売をインターネットによる登録を前提とし、抽選で当たった人だけが買える。インターネッ上では、まず、2003/12/26にファミリーマート「famima.com」による先行予約販売(登録抽選制)を行った(他に携帯電話での買い方もある)。当選するとメールが来て当選番号を知らされ、その番号と申込み時の電話番号を持ってファミリーマートで発券できる。この時から、既におかしかった。ダフ屋ではない普通の人なのに「絶対行きたい」と声を荒げ、家族の名前や友人の名前でガンガン申し込む、完全抽選だからとりあえず申し込む、いっぱい当たる、仕方なくオークションに出したり、売りさばいてダフ屋、いやプチダフ屋としての道程を歩み始める・・普通の人をダフ屋に育成してどうする(※)。
オークションではチケットだけでなく、発券する前の当選番号も売買される。先行予約販売は当選者が少なかったので高騰した。
※「ダフ屋」は犯罪です。ここで言う「プチダフ屋」はその本来の意味ではなく、仕方なく売りに出して、結果的に同じ線に並んでしまった人を解りやすく表現しているだけです。・・念のため。

■完全抽選性がダフ屋を生む
一般販売も完全抽選性だった。先行販売のコンビニ発券の他に、クレジットカード決済によるチケット送付なども受け取り方法に追加された。これは応募した人と欲しい人のバランスが崩れていた。先行販売で買えなかった人が、何重にも応募を強化し、だぶって当選しまくった。オークションに出しまくった。だぶついた。暴落した。それでも、普通の人がまた仕方なくダフ屋、いやプチダフ屋になった。
ちなみに、ダブって当たった場合、コンビニ発券/コンビニ支払いを選択した人は発券しに行かないことでプチダフ屋にならなくて済んだ。僕もそのひとりだ。こうなる予感がしたので、クレジットカード決済は選択しなかった。クレジットカード決済の人でダブって当選した人は、勝手に決済されてチケットが送られてきちゃうので、ダフ屋になるしかなかった。

■一番、悲惨なひとりはうちの西井だ。
彼はクレジットカード決済/チケット送付を選択したが、抽選でキャンセル待ちになった。キャンセル待ちでは入手できるかアテにはならないし、一緒に行く予定の知人が当たったのでそのチケットを譲って貰いW杯予選を心待ちにしていた。しかし、先週になって、何の連絡もなく、チケットが届いてしまった。先週、先週だよ、先週。キャンセル待ちが繰り上げられたのだが、JFAやチケットサイトからは「当選しました」のメール連絡もなく、ただチケットがいきなり届いた。恐ろしいことだ。仕方なく西井もオークションに出品、プチダフ屋になった。

■当たった人から後ろの席へ
ちなみにオークション結果をずっと追いかけると面白いことが解る。先行発売はアッパー(二階席)の後ろ、一般発売も当選が早い者から、アッパー中盤から前列、最後に当選した者は人気のあるロア(一階席)の席位置が割り当てられている。人気があるからプチダフしたら、儲かっちゃうねー。
つまり、ここでも、先行販売は人気のないアッパー席後ろから順番に割振られている節がアリアリなのだ。
(ただ、僕はサッカーはアッパーの前列の席なら好き。一般的に人気がないけどサッカーは俯瞰で観る方が見やすいと、個人的に思っているのが救い。屋根もあって、雨の心配もない・・とはいえ一般的には人気はない)

本当に見たい人から順に「後ろの端の席へどうぞ」という、お得意様から順に「後ろの端の席へどうぞ」という、結果的にはダブッて当たってしまったたくさんのプチダフ屋がチケットをさばく、本当にそんなことが行われているとしたら、これでいいのかチケット業界。



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Text : 神崎洋治 (TRISEC International,Inc.)

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