次世代の大容量光ディスクは青紫色レーザーを使用した片面20GB超になる。読者にとって解りやすいので「次世代DVD」という表現が使われるが、現存するDVDの延長線上にあるかどうかはメーカーによって捉え方が多少異なる。このコラムでも便宜上、次世代DVDと表現したいと思うのでよろしく。
さて、僕はDVDの単行本の執筆や月刊PC MODEでのコラム執筆のため、今年の3月に主要DVDメーカー各社に取材をし、次世代光ディスクについて状況を聞いてみた。そこで3月時点で次世代DVDについてきちんと応対してくれたソニーと東芝から聞いた話をここではまとめていきたいと思う。
■ブルーレイディスクとは
2003年3月3日、ソニーマーケティングからブルーレイディスクレコーダー『BDZ-S77』が発表になった。デジタルハイビジョン時代の青色レーザーディスクとしては記念すべき初の製品化だった。売上を伸ばしている民生機器のDVDレコーダーや書き換え型DVD市場では、既に次世代が幕明けしたのである。ブルーレイディスク(Blu-ray
Disc)は青色レーザーを使用し、片面一層で最大27GBの記録が可能な光メディア規格。
ソニー、松下電器産業、日立製作所、パイオニア、ロイアルフィリップスエレクトロニクス、サムスン、シャープ、トムソンマルチメディア、LG電子の9社が参加して策定している。もう一方の青色レーザーを使用した規格に東芝/NECがDVDフォーラムに提出して標準化を進めているAOD(Adovanced
Optical Disk)に先駆けて、ソニーはブルーレイレコーダーの商品化を果たした。 しかし、書き換え型DVDは規格が乱立し、今でもユーザを混乱させている。その結論が出ないまま、次世代DVDと呼ばれるブルーレイもまた、東芝/NECの提唱するAODという互換性のない規格と対立することになるのだろうか。また、ブルーレイとDVDとの違いはなんなのか?
商品化を急ぐ理由はどこにあるのか?
ソニー株式会社
AV/IT開発本部 企画部 統括部長 河内幸紀氏とホームビデオカンパニー 商品企画部 統括部長 村井良二氏に聞いた。 |
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ソニーはDVDとブルーレイの関係をどのように位置づけているのですか。
DVDプレイヤーで最も多いのはプレイステーション2ですが、既に民生用機器だけでも家庭用DVDビデオプレイヤーは2億台を超えました。DVDレコーダーはそれに対する互換性を持った録再機として今後も普及していくだろうとみています。Blu-rayが発売になったからといってその普及に影響するものではないでしょう。記録型DVDにおいては、ソニーはデュアルRW(-RWと+RWの両方)に対応していきます(村井氏)。
一方、現時点でのBlu-ray Discはデジタルハイビジョンの高画質録画に対するビデオレコーダーです。BSデジタル放送が2000年にはじまって以来、高画質でデジタル録画を楽しみたいというニーズは確実にあって、お客様を既に3年間も待たせてきました。要望に速やかにお応えするには、高い技術を持つ数社で短期間に仕様を決めて、素早く市場に出していくことが重要です。(DVDフォーラムのように)200社を超える団体では決まるのに時間がかかり過ぎると判断し、とにかく早い時期に商品化し、一度見たら魅了される高画質の世界を早く多くの人に楽しんで貰いたいと思っています。(河内氏)
DVDフォーラムで標準化をしようとしない理由はなんですか。
Blu-rayはDVDではないのですからDVDフォーラムの中で策定しなければならないというわけではありません。また、DVDフォーラムには200社以上が参加していて、企画を決めるのに時間がかかります。ブルーレイの9社でさえも時間がかかるんですから(笑)。
また、学会の技術者達が業界統一の技術を持って、"DVDの次"を考え出したのがBlu-rayであり、同じ考え方をもった数社が集まって規格策定をしたものです。Blu-rayには万全の自信があり、現存する仕組みでは最高のものという自負があります。
松下電器産業はある取材で、Blu-ray DiscレコーダーはDVDレコーダーのフラッグシップ商品になる、DVD-RAMにも対応すると言っていますが、ソニーはBlu-ray
DiscはDVDではないという・・Blu-ray陣営でも企業によって認識はちがうと・・?
Blu-ray DiscはDVDではありませんし、DVDが再生できなければならないということではない、と思っています。しかし、DVDに対応する市場ニーズがあれば各社の判断で対応していくことになるでしょう。
ユーザはBlu-rayを買うときに対応する記録型DVDも機種ごとに確認しなればならないのでしょうか?
ハイビジョン番組を自己録再をしているぶんには問題ないのでしょうけれど、DVDに関するニーズや再生専用のROMなど、これから詰めていかなければならないことはまだ山積みだと思っています。
今回発表したBlu-ray DiscレコーダーはDVD-RWには対応しているが、DVD+RWが対応リストにないのはなぜですか?
民生用の+RWビデオレコーダーがないので検証できない、というのが実際のところです(取材は2003年3月)。検証はできませんでしたがおそらくは使えると思いますけど・・。
■これからの課題
大容量のデジタルハイビジョンを高画質のまま長時間録画でき(16Mbpsで約3時間)、地上派放送ならDVDと同等の画質(平均8Mbps)で約6時間録画できるなど、『BDZ-S77』はハイビジョンやより高画質を求めるユーザにとっては待ちに待った録再機と言えるだろう。現時点でDVDとは別の市場にあることは間違いない。ただし将来、ブルーレイのROMがDVDビデオにとって替わったり、ディスク録画の主力となるような段階では、取材でもやりとりがあるとおり、同じブルーレイ製品であっても、メーカーによって対応する書き換え型DVDの規格がまちまちであったり、ブルーレイメディアの規格が様々である点は問題になってくるだろう。もちろん、それまでにはこれらの課題の大半が整理されていくのを期待しているのだが。
Blu-ray Discメディアが数種類あるようですが?
23GB、25GB、27GBと3種類が企画されていますが、現存(2003年3月現在)するのは23GBだけです。
これからの課題は?
ようやくリライタブル規格が決まったという段階であり、次は二層メディアが控えています。また、これからハリウッドの意見なども採り入れながら流通用映像作品のROMメディアに関する詳細や、パソコン用アプリケーションソフトも決めていかなければならないでしょう。やるべきことはたくさんあります!!
Blu-ray Discが市場的に次世代DVDとなるためには、越えなければならないテーマはまだまだ多い。ようやくスタート地点に立ったところだ。しかし、新たな可能性を秘めた大容量ディスクに期待せずにはいられない。
※インタビューは2003年3月に実施したものです。
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