| ■出遅れていても・・それでもソニーが欲しいご存じのとおり、年末商戦を迎えた家電量販店では、DVDビデオレコーダーが売れ筋商品になっている。シェア争いでは松下電器産業、パイオニア、東芝の3強と言われ、他のメーカーは大きく水をあけられた格好だ。TV 
              CMを見ても、ボブサップ(松下)、藤原(東芝)、パイオニア(白石)の宣伝をブッチ切りでよく目にする。売れるから宣伝する・・宣伝するからまた売れる、という好循環がこの市場には明確に存在している。実にいい傾向である。
 さて、そこにソニーが殴り込みをかける。田村正和と水野美紀が出演するCMを見た人も多いことだろう。やっと本気の宣伝攻勢をかけてきたソニー・・ソニーといえば、PSXの発表も話題だ。大容量HDDを搭載し、ゲームもできるのにも関わらず、価格はグッと抑えた。DVDレコーダーを初めて買う顧客層を狙った、入門機の位置づけとなる。今回は、スゴ録を開発したホームAVマーケティング部統括課長らにお話をお伺いしながら、ソニーのDVDレコーダー戦略を垣間見よう。
 8月に発表された日本能率協会総合研究所の「DVD&HDDレコーダーに関する消費者調査」(アンケート)においても、シェアは松下(27.7%)、パイオニア(22.6)、東芝(20.1)の3強の順になっていて、ソニーが10%強で4番手の位置にいる(10%強はずいぶん好意的な数字・・とソニー自身すら謙遜する:それほどに3強のシェアは飛び抜けている)。アンケートによると、購入の決め手は「メーカーの信頼性」で、最も購入したいメーカーは「ソニー」という回答になっている。「ソニー」・・・あぁ、ソニー。ソニーというブランドはどんな分野でも常に期待されているのである。読者からのメールにも「ソニーのDVD戦略はどうなっているの?」「ソニーを買いたいが欲しい機能の製品がない」「スゴ録とコクーンではどういうラインアップの関係なの?」「DVDには消極的では?」「もう気持ちはブルーレイなの?」と、ソニー製品に関する期待がこもった悲痛な内容が多い。 
              ソニーさん、そこのところどうなの?  ■やっとスタートラインについた・・
 
              
                |  ソニーマーケティング
 ホームAVマーケティング部統括課長
 近藤仁嗣氏
 |  「DVDには消極的では?」「もう気持ちはブルーレイなの?」
 
 ソニー自身はネガティブな意見を否定する。
 
 「決して消極的なわけではありません。ブルーレーザー(ブルーレイ)は次世代として大切な市場ですが、赤色レーザー(DVD)は現在のビジネスとして非常に重要な分野だと思っています。しかし、今までは技術的にも製品ラインアップにしても、正直言って3強に遅れをとっていました。周回遅れどころか2周遅れだったかもしれません。新しく"スゴ録"シリーズをこの度発表し、この5製品でようやく3強と戦える準備が整ったと感じています。年末商戦から積極的に拡販していきたい」 と、ソニーマーケティング ホームAVマーケティング部統括課長 近藤仁嗣氏は語る。スゴ録シリーズは9月上旬に発表したDVDビデオレコーダーのブランド名で、現在販売しているHDDを搭載しないデュアルRWレコーダー機『RDR-GX7』に、新たに加えた4機種(11/21発売)を追加した全5機種でラインアップされる。待望のHDD搭載モデルやVHS一体型もある。最上位機は250GBのHDDを積む。 「2003年度は200万台のDVDレコーダーマーケットと言われています。2002年が一年で80万台で、2003前半が75万台でした。つまり、2002年が1年かかった販売の数値を2003年は前半でほぼ到達してしまった・・それほど成長市場です。2003年後半は130万台くらいと予想されていますから、ソニーも何としても食い込みたい」と語る。 ■コクーンとスゴ録の差別化さて、ソニーには「コクーン」というデジタルレコーダーのブランドある。例えばその中の『NDR-XR1』という機種のWebページを見ると、「HDDに録る」「DVDに残す」「テレビで楽しむ」という特長が並び、あたかもDVDビデオレコーダーのように見える。しかし、製品の位置づけとしてはTVを拡張する、いわゆる"番組サーバー"である。ソニーはコクーン発表当時からこの点だけは強調してきた。番組サーバーとは、ケーブルTVやCSにはサッカー専門チャンネルのようなものがあるが、コクーンを使えばユーザーが自分の趣味趣向に合わせて専門チャンネルを自前で作ることができる、そんなイメージの録再機である。例えば「サッカー」をコクーンに登録しておくとサッカー番組をアクティブに録画して勝手に集めてくれるので、ユーザーはその中から見たい番組をチョイスして楽しめる、というわけだ。これを「まる録」と名付けた。ソニーが「コクーンはDVDビデオレコーダー市場に切り込んでいくためのシリーズではない」(近藤氏)というのはコクーンがそういったコンセプトを源としているからだ。それにしてもユーザにとっては紛らわしい・・それは否めない。ここで「スゴ録」の特長をはっきりと聞いておこう。
 
 ■スゴ録のキーワード
 
              
                |  ソニーマーケティング
 ホームAVマーケティング部
 在間文洋氏
 |  3強に食い込むべく、ソニーとソニーストの期待を担って登場するスゴ録シリーズだが、サイコロの目に掛けて6つの特長を打ち出している。そのうちの3つはコクーンで培ったノウハウを活かした「おまかせ・まる録」(前述の、まる録)「電子番組表(EPG)」「大容量HDD」だ。同ホームAVマーケティング部の在間文洋氏は・・
 「このシリーズの一番のポイントはテレビ録画をすごく便利にすることです。まずは予約が簡単な電子番組表(地上波)を搭載したこと。他社さんでは、上位機種のみに搭載される機能であったりしますが、ソニーでは今回発表したラインアップすべてに電子番組表を搭載しました。画面に表示される番組表から録りたい番組を選択するだけで予約できます。番組名も自動的に記録されます。また、野球放送の延長などにも対応しています」
 
 確かにこれは魅力的だ。僕の愛機にはEPGはない。だからいつもタイトル名をリモコンで四苦八苦しながら入力している(HDDにはたくさんの番組が記録されてリスト化されるので、番組名を入力しておかないと、後でどれがどの番組かすぐに解らなくて不便なのだ)。
 
 「また、コクーンほどのインテリジェンスはありませんが、簡単で使いやすい自動検索機能も持った"まる録"も搭載しています」
 
 と説明する。
 つまり、「スゴ録のまる録はTV番組を録るための機能として簡単、便利、賢いを追求した。コクーンのまる録はどんな番組を集めたいか学習していく超賢いまる録。ノウハウは継承しているが違う位置づけ」(近藤氏)で、機能の差別化は一応はかられている。
 ■それでも要望をいいたいっ!!ただ、僕としてはソニーのこれだけのラインアップにも、まだ不満を感じている。例えば、他社ではラインアップされている、DVカメラ端子やPCカードスロット、メモリスロットを搭載したHDD搭載モデルがない。TV番組を録るために機能を研ぎ澄ましたスゴ録には想定外の機能だったのだろうか。
 僕は、DV端子にDVカメラを接続し、DVテープで撮った映像をDVD-Rに焼いて保存している。
 
              
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                    | インターネットマンが執筆した DVD&ブルーレイの教科書
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                        | 体系的に学ぶ 次世代DVDのしくみ
 神崎洋治、西井美鷹著
 日経BPソフトプレス 
                          1,890円。DVDの乱立した規格やメディア、ドライブのしくみをわかりやすく紹介。二層式DVD、Blu-ray等、新しい規格にも焦点を当て、特長やメディア、ドライブ、互換性などを解説。
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 |  |  |  |  |  家族が気軽に観られるように・・だ。DV端子はとても便利だ。DVDレコーダー側からDVカメラを制御して、映像の終わりを検知して録画も自動でストップできるので放ったらかしでもOKだからだ。画質もすこぶる良い。スゴ録でこれをやろうとしたらHDDなしモデルになってしまう。 メモリスロットもまた重宝する。うちではデジカメに入れておいたSDカードをDVDレコーダーのスロットに挿して、デジカメ画像を大画面テレビにリモコン操作で表示できる。快適だ。画像はレコーダーにコピーも簡単にできる。たしかにこれらの使い方はTV録画とは関係ない・・しかし、デジタルカメラもデジタルビデオも使う僕にとっては、HDD搭載型DVDレコーダーに当然に求める機能なのである。
 2003後半は130万台といわれているDVDビデオレコーダー市場にソニーは本格参入する。ソニーでは10万円を切った価格帯、『RDR-HX8』がボリュームの勝負どころと見ている。ソニーの巻き返しに期待したい。
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