しばらく記録型DVDの使い方や操作方法についての解説が続いたので、今週は息抜きを兼ねてトレンド情報だ。ニュースウォッチャーの皆さん、チェックしといてちょ!!
2003年に入って、Webプロデューサーのビジネス本の執筆に忙殺された後、DVDの単行本を書くことになった。この単行本では難解に思えるDVDの規格やしくみ、歴史と変遷などを解りやすく解説しているのでお楽しみに。発売前にこのコラムでも紹介するので買ってね。それはさておき、いま、月刊PC
MODEで連載のコラムを持っているのだが、これもDVDの話題で進行中。4月24日発売の2003/05月号では「次世代DVD規格の標準化争いは再燃するのか」というテーマで展開しているからチェックすべし。DVDの規格争いは依然として解りづらいけれども、話題は早くも次世代ディスク・・・。その先鋒は「ブルーレイディスク」だが、先月ソニーがブルーレイ・ビデオレコーダーを早々に発表。ソニーの担当の人に話を聞いてきてまとめたものだ。そして、今月24日発売の2003/06月号では、その対抗馬と見られている「AOD」ディスク・・東芝の広報にも取材して続編をまとめたので、これも要チェックだ。雑誌がひと通り発売になったあとで、このコラムでも両陣営の話をまとめるから楽しみに待っていてね。
■なぜDVDウォーズが起こったのか?
さて、その両陣営の対立の話・・なんのこと? という人もいるだろうから簡単にまとめて話しておこう(詳しくは今度発売になる本を買って読んでね)。
記録型DVDにいろいろな規格があってユーザを惑わせているのはご存じの通り。一方でDVDビデオは、迫力のサラウンドやデジタルリマスターなどがマニア心をくすぐり、かつ、CDと違って黄金律的なトールサイズのケースが妙に愛おしくて、これまたマニアの収集癖に火を付けた。そんで、古いも新しいも売れちゃってハリウッドはまずまず上機嫌。そんなDVDだが、再生型DVDの規格化の際に東芝(&
タイムワーナー)とソニー(& フィリップス)は標準規格をめぐってそれぞれ「SD方式」と「MMCD方式」を提唱し、争った。1994年末にさかのぼる話だ。「SD方式」は東芝のほかに、日立、パイオニア、松下電器産業などが名乗りを上げ、「MMCD方式」はCDの覇権を次世代CD(今のDVDね)にも継続したいという思惑があった。技術的にはどちらにもいいところがあった。面白いのは、標準規格化にはコンテンツプロバイダである「ハリウッド(映画業界)」や「シリコンバレー(パソコン業界)」が強い発言力を持っていたわけだけれど、東芝はハリウッド、ソニーはシリコンバレーを味方に付けた。普通に考えると逆だよね。比較的弱い分野を政策的に取り込もうとしたのかもしれないけれど、結果としてはSD方式はハリウッドが、MMCD方式はシリコンバレーが支持している傾向にあった。これではいつまでたっても規格が決まらない、というわけで、ハリウッドとシリコンバレーが仲介に入るようなカタチで、SD方式とMMCD方式のいいところを合体した再生型「DVD」という規格が誕生した、とこう伝えられている。
DVDとして一本化された際に、DVDの普及と標準化を目指すオープンな団体としてDVDフォーラム(当時はDVDコンソシアム)が設立された。そこでは再生型DVDの規格である「DVD-Video」「DVD-Audio」、その根幹となる「DVD-ROM」がそれぞれ規格化され、規格書のDVD-Videoブック、DVD-Audioブック、DVD-ROMブックが発表された。現在、DVDフォーラムの議長は東芝が行っている。
■記録型DVDの覇権
再生型DVDは、東芝のSD方式とソニーのMMCD方式の技術が昇華したものだろう。記録型DVDには、DVDビデオのオーサリングとして互換性の高いDVD-Rと、松下のPDの血流を受け継ぐようなDVD-RAMが規格化された。まさに好対照な規格である。再生型と互換性を持つプロ向けのオーサリング用ライトワンス「DVD-R」と、パソコン用大容量記憶装置のテクノロジーから進化した「DVD-RAM」である。方向としては間違っていなかったはずだ。しかし時代は激動していた。市場ではユーザがCD-ROMと互換性があるCD-R/RWを支持し始めていた。記録型ディスクとしてのDVDとの互換性、そこでパイオニアの技術を活かしたDVD-RWが企画され、DVDフォーラム内に2つの記録型DVDが誕生した。このとき既にDVDマルチとなる、DVD-RAMとDVD-RWの両対応に対するイデオロギーは生まれつつあったのだが、実現へはいくつかの政策的な障害があった。
そこへきて、東芝を議長とするDVDフォーラムの外で、新たにひとつの規格が発表された。DVD+RW・・ソニーとフィリップスを中心とする新しい潮流だ。DVD+RWはDVDフォーラム内でDVD-RWと規格化を争った技術だ。優れた点をいくつも持っていた。しかし、著作権保護技術の点などで認定を見送られた、いわば第三の潮流と言えるだろう。
今年の世界的な展示会「CeBIT 2003」で発表されたこれらすべての記録型DVDの書込に対応する日立LGデータストレージの『GSA-4040B』(アスキー24)、例のアレがこの夏にも日本市場に投入されることになった。赤色レーザーの時代は新しいうねりへと入るだろう。DVDマルチ(DVD-R/RW、DVD-RAM)か、デュアルRW(DVD-R/RW、DVD+R/RW)か、それともDVD全対応か。ユーザにとってはDVD全対応が言うことナシなのだか、先の著作権保護の兼ね合いですべてのメーカーがこぞってその方向へ進むことはない。
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■次世代光ディスク「青の時代」
次世代は青紫色レーザーを使った、ハイビジョンTV向けの大容量光ディスクの時代だ。ここでも、DVDフォーラムの内か外かという論議がある。
かねてより展示会などでソニーなどが参考出品していたブルーレイディスク(Blu-ray Disc)が、ソニーマーケティングからブルーレイディスクレコーダー『BDZ-S77』として今月いち早く製品化を果たした。片面23GBの大容量だ。ブルーレイディスクはソニー、松下電器産業、日立製作所、パイオニア、ロイアルフィリップスエレクトロニクス、サムスン、シャープ、トムソンマルチメディア、LG電子の9社が参加(AV
Watch)して策定中だ。「次世代光ディスクはDVDではないのだからDVDフォーラムで規格化される必要はない」(ソニー)としている。ディスク自体は片面で最大23〜27GBまで3種類あり、現在商品化されているのは23GBのカートリッジ式のみ。製品としては、ビデオレコーダー1機種だ。ビデオレコーダーとしての特長は、ハイビジョン放送の高画質でも2時間を収録できるキャパシティ、地上派放送をDVD画質で録るのならDVDビデオレコーダーより長時間録画ができる。DVDはmax11Mbpsの転送レート、高画質とされている平均8Mbpsのモードで約1時間強の録画時間がせいぜいだが、ブルーレイでは16Mbpsで約3時間録画が可能になり、平均8Mbpsのモードで録れば6倍の約6時間が録画できる。ただし、まだ価格が高いので、気軽に買えるというものではない。ちなみにブルーレイ企画ではDVDのサポートは各メーカーの製品が任意に決めることになる。BDZ-S77ではDVD-ROM(DVDビデオ)とDVD-R/RWに対応している。やがて発売されるであろうブルーレイROMの映画などが再生できる可能性は低い。
一方はAOD(Advanced Optical Disk)である。次世代光ディスクも標準化のためには「DVDフォーラムで規格を策定するのが理想」(東芝)として、DVDフォーラム議長を務める東芝と、同様に青紫色レーザーディスクを開発してきたNECが、昨年の夏に歩調を合わせて「AOD」規格を提案(ZDNet)。既に稼働するドライブをCeBIT
2003で展示(ZDNet)した。記録型AOD(仮名)は片面一層で20GB、片面二層で40GBを実現するという(ROMの場合はそれぞれ15GB/30GB)。今年の夏か、遅くても年内にはDVDフォーラムで規格化したい、としている。製品の予定は未定だが、DVDフォーラム内の規格であれば、DVD-ROMはもちろん、DVD-RAMとDVD-RWのサポートも確実だろうと推測される。
DVD規格をめぐる東芝とソニーの戦いが、新たなる「青の時代」の規格対立へと発展するのだろうか(更に詳しいコラムを来月掲載する予定)。しかし、ユーザは嘆くなかれ。今は歓迎すべきだ。この競争があってこそ良い技術が生まれることもまた事実。これから迎える青の時代、ユーザのニーズにより近づくのはどちらの規格か、どれだけ便利になるのか、わくわくして待つことも至福。
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