■Acrobat X 内覧会レポート
2010年10月18日、アドビシステムズがアクロバットの新版「Adobe Acrobat X」(アドビ・アクロバット・テン)を発表しました。アクロバットはリリースしてから17年、10ではなく「X」になって新しい方向に舵取りをしていくのでしょうか。
報道関係者向けの内覧会に参加しました。
内覧会ではアドビ・アクロバットの担当チームによる、Acrobat Xのマーケティング・プレゼンテーションや製品デモンストレーションが行われました。
「PDFは知ってるけど、アクロバットってなに?」という読者も多いかもしれません。PDFはご存じ世界的に普及しているデジタル文書のファイルフォーマットです。社内の報告書としてやりとりしたり、インターネットからダウンロードしたカタログや申込書がPDF形式で作られていることも珍しくありません。
ただ、このPDF、元々は「WindowsでもMacでも開けるファイル形式」ということで開発されたのがスタートでした。
このデジタル書類であるPDFファイルを開いて閲覧するためのソフトウェアが「Adobe Reader」ですが、以前は「Acrobat Reader」と呼ばれていました。そう、それが今回主役の「アクロバット」です。
PDFを読むソフトがAcrobat Reader(現Adobe Reader)で、作成するソフトがAcrobatです。ワープロや表計算ソフトなどで作成した書類をプリンタに出力するかのように、デジタルファイルとして書き出す機能です。
そのため、Acrobatはプリンタドライバ(プリンタ用ソフトウェア)のように動作し、画面はプリンタ印刷時の設定のごとく、画質やカラー、用紙サイズ等の設定を行う(Distiller )だったのです。
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AcrobatとPDFの歴史。(内覧会での資料より) |
しかし、PDFが普及し、社内外での書類のやりとりに活用するようになると、Acrobatは管理や運用面での機能を強化していきます。PDFを扱うサードパーティ製のソフトウェアにそのような機能のものが乱立していったこともあり、Acrobat自身がそのような進化を求められたこともあったのでしょう。例えば、PDFでやりとりする中で、文書の暗号化やプリントの許可/禁止の設定などセキュリティ面での強化、画面上で書類にコメントを入れたり、付箋を貼ったり、電子署名やGPS情報の対応など、進化を遂げてきました。
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普及し、圧倒的な支持を得ているAcrobatとPDF。(内覧会での資料より) |
■Acrobat X の特長
今回、アドビの説明によれば、Acrobatは最終フォーマットとしてのPDFファイルだけではなく、文書処理全体の作業をPDFで行う「アクロバット・ダイナミックPDF」というコンセプトを掲げています。
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企業における文書関連業務の現状と問題点を分析し、
新しいAcrobatで改善と効率化を提案。(内覧会での資料より) |
例えば、プロジェクトの企画段階の書類の動きとしては、
- 情報収集を行って企画書のドラフトを作成する
- 企画書のドラフトをチームでレビューして完成させる
- 企画書の承認を得る
- 企画書を複数人でアップデートする
- 企画書を複数人で共有する
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上がブラウザで見たホームページ。下がAcrobat Xで取り込んだPDF。レイアウトが維持されている。更に、リンク情報が保持されていたり、真ん中のフラッシュ動画がそのまま動作しているところは、ホームページをプリントアウトした「紙」ではマネできない点だ。 |
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PDFの内容を添削(校正)したり、ハイライトして指示を書き込む、などが簡単に行えるAcrobat X画面。操作方法はウィザードやリストが右に表示されるインタフェースだ。 |
といったものがあります。
この場合、ひとつの文書に対して、複数の人が作り、レビューし、承認し、アップデートし、閲覧するため、常に共有と取扱がしやすい効率性が求められます。
従来であれば、作成段階ではワードやパワーポイントで行ったり、エクセルの資料を添付したりなど、複数のアプリケーションが使われ、完成した企画書を共有する段階でPDFを用いる、という方法が一般的でした。ドラフト段階で承認を得るところをPDFで行っている会社も多いかもしれませんが。
Acrobat Xではこの文書処理業務のすべてをPDFで行いましょう、という提案が含まれています。
「情報収集」という段階では、Acrobatから紙の資料をスキャンして取り込めばOCRで文字情報をデジタル化し、検索等で活用できます。
インターネットのホームページをブラウザから取り込めば(Acrobat XからFireFoxにも対応しました)、リンク情報はデジタル情報としてデジタル書類の中で活用できますし、フラッシュは画面上の書類の中で動作します。
集められた資料は、ウェブの情報、紙の書類、エクセルで作ったデータ資料や見積書、パワーポイントの企画書など、多くの形式のファイルで構成されることが常ですが、これをひとつの形式でPDFにまとめる「PDFポートフォリオ」(Acrobat Pro)を使えば、見せたい順序で統一感とPDFのセキュリティを付加して、デジタルファイルのやりとりを行うことができます。
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異なる形式の書類を束ね、企画書の共有を支援する新版のキーワード
「PDFポートフォリオ」を説明する資料とイラスト。(内覧会での資料より) |
このようにAcrobat Xでは、単にPDFを作成し、メールやウェブページで配布しやすくするだけでなく、紙やウェブ、様々なアプリケーションで作られたデジタル書類を統合し、効率よく業務を進めるためのソフトウェアへと進化を目指したのです。
不景気だし、社内にいろいろと不満がたまっている昨今ですから、書類のやりとりをもっとスムーズに効率化し、ローコストで速い書類管理を目指すのもいいかもしれません。
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無料の閲覧ソフト「Adobe Reader X」も改良された。(内覧会での資料より) |
【アドビストア価格】
「Acrobat X Standard」
製品版 3万6540円
アップグレード版 1万9110円
「Acrobat X Pro」
製品版 5万7540円
アップグレード版 2万5410円
特別提供版 2万5410円
「Acrobat X Suite」
製品版が15万1200円 特別提供版が11万145円
発売予定日は、ダウンロード版が11月15日、パッケージ版は12月1日
ただし、Acrrobat X Suiteはダウンロード版が11月24日、パッケージ版が12月10日の発売予定
バージョンなど詳しくはアドビシステムズ社の公式ホームページで。
※ 内覧会の資料は内容を正確に伝えるため、そのまま掲載しています。
本文は著者の主観が含まれます。
※ Acrobat X の画面はベータ版です。製品版とは異なる場合があります。
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