この表題、一見して突飛な話に聞こえるかもしれないが、業界はそれを肌で感じている・・感じている人たちがいる。
松下電器は2004年にビデオデッキからDVDレコーダーへと市場の主役は入れ替わり、日立は2005年にDVカメラのメディアがDVDに切り替わると予測する。次のワールドカップが開催される頃には、ビデオデッキはすっかり店頭から姿を消していたりするのだ。
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■松下電器は2004年にDVDレコーダがビデオデッキを上回ると予測
DVDレコーダー市場を快走する松下電器産業の調べによると、2002年度のDVDレコーダーの国内出荷台数の実績は約83万台。01年度の実績(18万台)から約4.6倍も跳ね上がっている。更に03年には220万台(約2.6倍)、04年に300万台(1.3倍)に達すると見込んでいる。同社は「この数値でいくと2004年度中にVHSビデオデッキの出荷台数をDVDレコーダーが上回る」と説明する。たしかに国内のVHSビデオデッキ市場は2000年には645万台だったものが、01年には589万台(前年比91.3%)、02年は430万台(73.0%)と急下降している。03年は270万台(62.7%)にまで落ち込むと同社は予測。予測が正しければ、この4年間でわずか4割に激減することになる。その穴埋めにDVDレコーダーの売上増を見込んでいる格好で、市場の動きもさることながら、企業の戦略上、DVDレコーダーを重要な柱にしていきたいのである。そして松下電器はそこで獲得するシェアの目標を50%と定めた。
50%というのはずいぶんと大きなことを言っているのか? 同社パナソニックマーケティング本部 大坂仁志氏はその問いかけを否定し、こう説明する。「今まで、当社はDVDレコーダーに関するシェアで、60%くらい獲得したときもあった。市場が小さいときは可能だった数値だが、これからは市場が急成長する。市場が大きくなれば多くのメーカーが参入し、その時点でシェア50%を維持するのは簡単ではないでしょう。しかし、目標として不可能な数字ではまったくないのです」
2003年4〜5月期の販売において、DVDビデオレコーダーの国内シェアを53%獲得したとしており、松下電器がDVDレコーダーに賭ける熱意はすごい。
■VHSテープはなくなるのか?
ただそうは言うものの、急にDVDが家庭用の映像記録メディアの主流になる、と予告されても戸惑う読者も多いことだろう。VHSビデオデッキがなくなるというのもにわかに信じがたいので、その点を同社に問いかけてみた。
パナソニックマーケティング本部 石原史康氏は語る。「もちろん現時点でVHSテープが再生できなくなるのは困るというユーザーは多いです。ただし、そのような場合はVHSとDVDの複合機能搭載機が選択されるようになり、VHSテープだけのデッキの販売は激減していくだろうとみています」
たしかに一世を風靡したカセットテープ専用デッキはすっかり見なくなって、CDやMDなど複合機能型コンポに置き換わっている経緯がある。レコードがあれぼと急速に姿を消していくとは予想できなかった。それがAVの分野でも起ころうとしている。(VHSとDVDレコーダーの複合機はDVDレコーダーの出荷台数に含まれている。)
そう仮定したとしても、こう不景気では、複合機が現在のVHSビデオデッキに近い価格まで低下することが条件のようにも思えるが、「今はVHSデッキの買い替え促進のために価格は急激に下がっているイメージがあるが、今後は徐々に下がっていくだろうと、実は予測しているんです」(石原氏)「市場が広がるに連れていろいろ出てくるユーザーのニーズに合わせて、幅広い機能と価格帯で選べるラインアップを目指すことになります」(大坂氏)という。事実、同社の最新ラインアップでは、実売価格6万円前後から、最上位機DIGA
E200Hの19万8千円まで、とかなり幅広い。
■ビデオのように使いやすいDVDレコーダー
もともと松下電器産業のDVDレコーダーDIGAシリーズは、ポストVHSを目指して商品ラインアップ化された。機能は充実させても操作性は犠牲にしない、むしろ簡単な操作のための機能アップを常に考えてきた。E200Hでは地上放送を使ったEPG(テレビ番組ガイド)を採用し、ラテ欄(ラジオテレビ欄)画面上で番組を選択するだけで録画予約ができる。Gコードよりも簡単だし、番組タイトルも自動で記録される。また、DVカメラをケーブル接続したり、デジカメ撮影したメモリカードを挿して、動画や静止画を1枚のDVD-RAMにまとめて収録できるので、子供やそのイベントごとにディスクを分けてライブラリ化するのも簡単だ。このように最上位機でも使いやすさを前面に押し出してPRしている。動画のカット編集もスライダーでカットのイン点/アウト点を指定するだけで簡単にできるのもウリだ。松下電器はボブサップ氏や妻夫木聡氏の大々的なCM展開が印象的だが、機能面でもラインアップ面でも市場No.1を堅持していく体制で年末商戦にのぞむ。
■家庭用DVDとパソコン用DVD
さて、パソコンユーザーとしてはDVDプレーヤーにおいても、対応している記録型DVDの規格が気になるところだ。松下電器はパソコン用DVDドライブではDVDマルチ(DVD-R/-RW/-RAM)を生産している。しかし、DVDプレーヤーではDVD-RとRAMのみに対応し、現時点では-RWに対応する予定はない。これは同社がユーザーのスキルの違いを読んでのことらしい。
「パソコンユーザーは比較的これらの規格を理解しているし、メディアのやりとりにおいてDVDマルチの必然性がある。しかし、DVDレコーダーではユーザー同士でメディアのやりとりはほとんど行われない。いろんな規格に対応しているからいいんですよ、というのは売り文句としては耳障りがよいが、実際にはそれを使い分けられるかどうか疑問です。買ってからかえって混乱するでしょう」(大坂氏)。そう判断し、「10万回書換可能な耐久性やAVデータの混在記録、追っかけ再生機能など、使い回しの良さではDVD-RAMが最適」(石原氏)としている。同社は次世代のブルーレイディスクでもRAMをサポートしていく予定だ。
次回はDVカメラのDVD化を目論む日立のはなし・・・。
(※今回はPC Modeで執筆/掲載したコラムに肉付けしたものです) |