今年最大の話題作である『スターウォーズ
エピソード3 シスの復讐』が全米で公開された翌日に、劇場で盗撮された映像がDivX動画ファイルに変換されて、ネットで違法に無料配布(交換)されはじめた。それに誰かが日本語字幕を入れ、日本のP2Pネットでもまもなく違法配布された。そのDivX動画ファイルは約740MB、1枚のCDになるべく収まるように圧縮されたものだ。このファイルを入手した人は日本でスターウォーズ
エピソード3が劇場公開されるずっと前に、リビングのDivXプレイヤーで世紀の話題作を楽しんでいたわけだ。
また、世界中で最も早く、東京で行われる予定だったトムクルーズ主演のスピルバーグ作品『宇宙戦争』の試写会が中止になった。理由は、ネットで違法配布される動画ファイルの素になる、本編の「盗撮」を完全に防止できないというもの。このように、ネットでの違法配布が映画の流通ビジネスに今や深刻な影響を及ぼしているのは、もはや周知の事実となっている。
■観たいビデオを選んで借りるか、借りてから選ぶか
『GEO@チャンネル』をレンタルすると、店頭でこのセットトップボックスを貸してくれる。これをADSLやケーブルに接続してビデオ作品を観るのだーっ。
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一方で、ADSLやFTTHの普及とともに、一般家庭で映像作品をブロードバンドで視聴するインフラは確実に整ってきている。インターネットを利用する視聴者が、観たいときに観たい映像作品を選択して楽しむことができる家庭用の「ビデオオンデマンド(VOD)」のサービスが、映像流通ビジネスとして続々と発表されている。
全国で600を超えるレンタルビデオ店などを展開するゲオが提供する『GEO@チャンネル』もそのひとつ(実際は、ゲオとインデックスの合弁会社ゲオビービーが運営)。映像作品を視聴するには専用の機器(セットトップボックス(STB)と呼ぶ)が必要で、STBはWEBで申し込むか、または一部のゲオ店頭で借りることができる。
料金は好きな5作品が選べるSTBを店舗から1週間980円で借りる「ライトプラン」と、月額基本料500円で作品視聴ごとに課金される(ペイパービュー(PPV))の「スタンダートプラン」がある。後者はWEBか電話で申込み、STBが送られてきる。VODサービスは「借りたい作品がいつも貸し出し中」「店舗に頻繁に足を運ぶ時間がない」「近くに店舗がない」など、従来の会員が抱える不満を解消することが主な狙いとなりますが、更に、店舗に足を運ぶユーザ層(10〜20代)より上の、インターネット利用者層(20代〜40代)にアプローチしたいという狙いもある。
■7月初旬、ライトプランでVOD体験記
「ライトプラン」で借りて楽しむにはまず、GEO@チャンネルのサービスを行っているゲオ店舗を探す必要がある。まだほんの数十店舗だけなので僕の場合は、クルマを1時間も走らせて借りに行った(これはまず難点だね。うちの近くの店舗にSTBが無ければ、普通は借りようがない)。ゲオ会員であれば、レジで会員証を提示するだけで、STBを借りることができる。STBのサイズはB5ノートPC程度で、しかも軽いので歩きでも持ち帰れる。
『GEO@チャンネル』の操作画面。操作に迷うことはないが、検索機能の強化とタイトル数の大幅な充実が望まれる。
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STBのレンタル期間は一週間、キャンペーン中だったので料金は500円、5本まで視聴が可能。5本以上観たい場合は一度STBを返却して再度借りる。これも面倒。STBを持ち帰ると、インターネットに接続したLAN回線と家庭用テレビに接続する。国内の主要プロバイダに加入していて、ADSL、FTTH、CATVなど、2M/bps以上の回線速度、ブロードバンドルータなどでLAN環境があれば利用できる。
操作はリモコンだけで手軽にできてシンプル。普段パソコンをいじっている人ならSTBの接続と操作に戸惑うことはないだろう。STBの電源を入れ、レンタル伝票に書かれているパスワードを入力し、メニューから観たい映像作品を選択する。映画やバラエティ、アニメ、ドキュメンタリーなどにジャンル分けされていて、ランキングコーナーも用意されている。観たい映像作品を選択して「レンタル中作品一覧」に5本まで登録できる。2泊3日などの視聴期間が設定され、期間中は同じ作品を何度でも視聴することができる。画像はMPEG-2で、2M/bps用の標準画質と4M/bps以上向けの高画質が選択できる。・・とまぁ、ポイントはこんな感じ。
■明らかにコンテンツ不足の現状
今後の展開に期待したい
設定と操作は簡単だけんど、まだ始まったばかりということもあって選べる映像作品があまりに少ないのが問題点だ。本当に惜しい。300タイトルや500タイトルというと多いように感じるけれど、アニメやドラマ等の各話を1作品としてカウントしているので、ガンダムシリーズだけで、すごい数・・・映画ファンには物足りない状況だ。
例えば、日本映画のアクションSFジャンルには「戦国自衛隊(旧)」のみ(!)、コメディには「ぼくらの七日間戦争」のみ(!)、ドラマには「人間の証明」のみ(!)しかなかった。早く増えてくれ。
作品数は大幅増が計画されていますが、お待ちかねの「新作」は頒布権上の関係からか店頭のレンタル開始時期より遅くなるようだ。ユーザーが同じ料金さえ払えば、店頭で借りてもSTBで観てもビジネスは成り立つように思うのだけど…、複雑なんだろうね・・はぁ〜。
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映画(映像)産業にとって、冒頭の違法配信の横行は既に見過ごせる状態ではない。ただ、法律規制の強化もさることながら、新作や話題作をネットで視聴したいというユーザーニーズをビジネスとして実現することも、映画産業にとっても大切なテーマだと思うのだ。そういう意味では、映画館上映→DVD販売→レンタル→テレビ放映といった従来の映像作品流通ビジネスの一連の流れが、今後は大きく変わる可能性も否定できないでしょ。ユーザーの立場からすれば、新作や話題作が劇場やレンタルショップ店頭だけでなく、様々な視聴手段で提供されることはうれしいことだし、それによって映画産業自体も反映すればすべてがうまくいく。そんな気がする。もちろん簡単なことではないんだろうけれど、いまスタート地点に立ったばかりのVODの今後に、期待をせずにはいられないのである。
はやく、「新作が観たいならVODがお勧め」と言えるようになってちょーだいっ。
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