今日、アップルは電話を再び発明する・・
2007年1月9日、米国サンフランシスコで毎年開催されている恒例のアップル社の展示会「MACWORLD EXPO」で、アップル社のスティーブジョブス氏が基調講演で言った有名な言葉。
このひとことからiPhoneの歴史が始まった。
アップルと言えばMacintosh、昔からの根強いファンがいて、とてもいい製品にも関わらず、一般に普及したマイクロソフトのWindowsの波に押されて、パソコン業界では負け組とさえ言われていた。
2007年6月に初代iPhoneは発売された。
しかし、この初代iPhone、日本で使われている携帯電話の電波に対応していなかったため、日本では発売されず、一部のAppleファンは除き、さして注目もされなかった。 現在のiPhoneユーザには意外に感じるかもしれないけど、初代iPhoneはアプリをダウンロードして、インストールすることはできなかった。 日本では既に高機能な携帯電話(ガラケー)が普及していたので、機能的にも初代iPhoneにはそれほど魅力がなかった。もし、今のスマートフォンに、TwitterやFacebookやLINE、マップ、パズドラ(笑)がなかったらこれほどヒットしただろうか?
ところがiPhoneの期待も評価も一変した。
iPhoneは第2世代となるiPhone 3Gで、アプリのインストールに対応することを発表したから。しかも、この機種から日本の電波でも使える機械になり、当時、アップルのスティーブジョブス氏と孫正義氏が懇意にしていたこともあり、ソフトバンク(モバイル)が日本での販売に名乗りを上げたのです。
まぁ、はっきり言えば、ドコモもauもスマートフォンの魅力には気付いていなかった、気付きたくなかったといったところもあった。
それでも、それまでは 「まだ普及していないiPhoneのためにアプリを開発する人がどれだけいるの?」 という懐疑的な意見が大半を締めるのが当たり前。 しかし、アップルは音楽プレーヤーの「iPod Touch」と「iPhone」で共通のアプリが使えるようにした。 既にたくさんのユーザーがいる携帯型音楽プレーヤーのユーザーの数と市場をプラスすることで、アプリはとてつもなく大きなビジネスチャンスを開発者にも生み出した。 こうしてiPhoneは一気に人々の羨望の的へと変わっていった。
■Googleが勝者となったきっかけは?
iPhoneの大ヒットのきっかけは、iPod Touchと共通のアプリがインストールできるようになったこと、と言ったけど、インターネットの世界にも同様に、製品やサービスとしては評価が高かったものの、ビジネスとしてはそれほど注目されていなかったものがある。
それが実は「Google」の検索エンジン(検索サイト)。
当時、僕はシリコンバレーに住んで、ネットベンチャーを中心に取材をしていたんだけれども、Yahoo!が脚光を浴びる中、Google検索は技術者やパワーユーザーの間では評価が高かったものの、無料の検索でどうやってビジネスを成立させるのか? と疑問視されていたんだ。
そんな周囲の疑問や嘲笑をひっくり返し、アッという間にインターネット・ビジネスの中心企業に躍り出たきっかけが「キーワード広告」(リスティング広告)の掲載だった。
キーワード広告の登場によって、単にタダで使える便利検索エンジンだったものが、検索する人にヒットする効果的なテキスト広告を表示して巨大なビジネスを生み出す媒体に変貌した。
時代が変わった、いや時代を変えたのだ。
このように、製品やサービスのヒットは、ひとつの発想がスイッチになることも少なくない。
そういえば、GoogleはiPhoneの最大のライバルのOSである「Android」を開発し、各社のスマートフォンなどに無料で使用することを許諾している。
スマートフォン用OSの普及が次の一手のキーとなる、との考えあってのことでしょうが、どこかでまた驚異的なジャンプを見せるのかな。
▲ Text : 神崎洋治 (TRISEC International,Inc.)
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